白一色に統一されたシンプルなマグカップにコーヒーを注ぎながら、

本来そこにいるはずの少女の姿が見えないことに少々訝しむ。

少し前にその少女が捜していたEGは戻ってきたというのに

当人である少女は一向に姿を現さなかった。

「・・・ラメス中々戻ってこないけど」

テーブルにコトッとマグカップを置き、

家に帰ってきてから人に背を向けっぱなしのEGに訊ねる。

「あんた本当に何も知らないの?EG」

痛いところを突かれたようにギクッと体を震わせながら

仕方なしに彼女はこちらを向いた。

「そんなセアムさん〜いくら守護霊の私でもそんなこと・・ねぇ・・・」

必死に右手をハタハタと振って抗議しながらも、

顔からは冷や汗が滴り、その瞳は泳いでいた。

大方あのバカがまた事故現場の調査をしているのだろうと察しはついた。

はぁ、と溜息をついてセアムはEGに問いかける。

「何?またバカやってんの?あの子は・・」

その後に返ってくるであろういつもの同意を含む返事が、しかし今回は違った。

いつもとは違って、その・・と言葉を濁す相手は、

それでも主人の意志を伝えようと真摯な目を向けて言った。

「少しはマシ・・いえ、だいぶマトモですよ」

その言葉に、セアムはふぅ、とまた溜息をついた。

「本当にバカだね ラメスは」

『自分のミスじゃない』って言ってんのに・・とセアムは呆れ調子で言う。

それを聞いてEGは、あはは、と笑った。

「セアムさんにはもうお見通しだなぁーラメスがすること・・わかってたんですね?」

スッと置かれたマグカップを手に取り、

そこに映る無表情な顔を見つめながらセアムは答えた。

「いつか・・あの子が地上へ行って事故の原因を見つけに行くのは分かってた」

グイッとカップの中身を飲み、再びテーブルの上に置く。

「EG(あんた)には言ってあたしには言わずに行くことも・・」

「じゃあどうして止めなかったんです?」

分かっていたのだったらラメスを止めることができたはずだ。

セアムはラメスが事故について調べることを快く思っていなかったし、

それが地上に行ってしまえば進展があることを知っていた。

そしてセアムにはそれを阻止することなどいくらでもできただろうに。

相手はしばらく考えるようにして黙っていたが、やがて口を開いた。

「止めても・・ラメスには地上にいつかは行かなきゃいけない使命がある」

私がそれをどんなに止めようとしても無駄な行いになるだけよ。

そう溜息混じりにセアムは呟いた。

「・・・・・」

「?どうかしたの?」

固まるようにしてこちらを覗き込む少女に問いかけると、

相手はハッとしたように顔を上げた。

「え、いや・・・何か難しくてわかんないやっ」

アハッと笑うEGにセアムはもう何度目かの溜息をついた。

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